にのだん社会保険労務士事務所

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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和6年3月号(No.52)

【①なぜ保険料率は毎年改定するのか?】

 健康保険料率及び介護保険料率は毎年3月分(保険料の納付は4月末)よりほぼ間違いなく改定されています。いっぽう厚生年金保険料率は各個人の標準報酬月額に18.3%(事業主負担+被保険者負担)と長年据え置きされています。(ただし法改正等により今後変動する可能性あり)

 毎年のように健康保険料率と介護保険料率が改定されるため、給与計算担当者さんにとっては「計算誤りになっていないか」また従業員さんにとっては給与明細の天引き額が毎年変動することで「本当に合っているのか」など共に不安になることも想定されます。厚生年金保険料率のように変動しないほうが分かりやすいのに、どうして変動するのか?

 収入支出で考えたとき、収入は事業主・被保険者が負担納付する保険料になります。本来はこの収入から被保険者や被扶養者に関わる医療費(自己負担を除いた7割)や保険給付(高額療養費や出産育児一時金、出産手当金や傷病手当金など)の支出が保険料収入の範囲内で十分賄われていれば毎年保険料率を変動する必要はないかもしれません。

 しかし現状のルールでは、社会保険に加入する被保険者や被扶養者に関わる支出だけでなく、国全体の医療制度で発生している医療費・保険給付に伴う多額の費用もカバーすることになっています。つまり社会保険に加入する被保険者が負担する健康保険料や介護保険料が「前期高齢者納付金」や「後期高齢者支援金」として国民皆保険制度を支える重要な財源となっています。保険料率が毎年変動するのは、安定的な収支が予測出来ないことが大きな影響かもしれません。

 決して低額ではない健康保険料や介護保険料が日本全体の医療制度を支えているという意義、そして社会保険料は折半として事業主も負担している福利厚生である点を若い従業員さんに正しく理解してもらうことが大切であると感じます。

 健康保険料率10% 介護保険料率1.6%(令和6年3月分~協会けんぽ和歌山県)

【②●●会社関係者入店禁止のニュース】

 先日とある居酒屋さんを3時間飲み放題で利用した団体客が会計時に「1人あたり5千円を超える料金が高い」と文句を言ってトラブルが発生。最終的にオーナーさんが「いくらだったら納得するんや」に対して「1人4,000円やな」という相手の言い分にオーナーさんが折れたものの今後一切、当該関係会社の入店を断る貼紙(のちに外したとのこと)を店頭に掲載したニュースを見かけました。

 今回、料金の経緯から見ても圧倒的な意見としてオーナーさんに同情する声が多かったですが、法外な金額であれば「ぼったくり店」と判断される可能性もあったかもしれません。このような団体客で利用した際の料金トラブルは、過去に幹事を任されやすかった私には大変興味のあるニュースでした。

 確かに団体客で利用する場合、前もって「1人予算は●千円」と決めておきながらも万が一参加予定者がドタキャンしたり「●●料理は苦手」とか「●●は絶対食べたい」と言われれば店の人と小まめな交渉する労力が発生します。過去には1人あたり飲み放題つきお任せ料理で4,000円を切るような格安店を見つけたものの、テーブルの端に置かれていた刺身醤油を入れる皿を使う料理が最後まで出ず、参加者から叱られた経験もありました。

 最近幹事をする時は急な欠席者も考え注文は原則自由にし、お店には「トータル●万円を超えそうだったら声をかけて」とお願いする方法を私はとるようになりました。いずれにせよ店側客側がトラブルにならない客観的な明朗会計が最善の方法かもしれません。

 そのような時、社労士としておすすめするのが「業務改善助成金」です。昨年経営相談で対応したお店は、従業員さんの賃上げ予定とともに業務を改善する設備を導入する計画書を助成金担当の労働局へ提出。その時の設備というのは従来の方法であった注文時に手書きで伝票に記入して調理を開始、飲食後伝票をもとに会計、手打ちのレジで金額を手入力、現金のみのやり取りであった一連の流れを店員を介さずにタブレットで客が注文(合計金額の確認も可能)、情報は厨房に届いて調理開始、飲食後の会計は注文情報がレジに届いて即時に会計、現金だけではなく他の支払方法にも対応するシステム一式を業務の改善として導入することで、最終的に設備費用の8割ほどが助成されたとのことでした。

 助成金は年度ごとでルールは変わりますが、積極的な賃金引上げを国が求める以上、それに関連して業務を改善する設備を導入する際に活用出来る「業務改善助成金」は廃止されることなく今後も継続される助成金であると想定されます。ぜひ一度活用をご検討ください。

~最後までお読み頂きありがとうございました~